法相の諮問機関である法制審議会の専門部会が、刑事訴訟法改正に向けた要綱骨子案をまとめた。
殺人など最高刑が死刑に当たる罪の時効を廃止し、懲役・禁固の罪は時効期間を2倍に延ばす。既に発生して時効が進行中の事件にもさかのぼって適用するとしている。
政府は今国会に法改正案を提出する予定だ。成立すれば明治以来続いてきた公訴時効が一部撤廃される。日本の刑事司法制度の大転換になろう。
時間の経過で証拠が散逸して公正な裁判が困難になることや、処罰感情の希薄化などが時効の根拠とされてきた。だが、DNA鑑定など科学捜査は進歩した。犯罪被害者や遺族らも「処罰感情が薄れることはない」と見直しを求めてきた。
殺人など死刑に当たる罪の時効は2005年法改正で15年から25年に延びたが、内閣府世論調査では25年を「短すぎる」とした人は54・9%に上り、うち49・3%は時効廃止を求めた。
骨子案は被害者らの心情や世論を反映したと言える。欧米では重大事件の時効を廃止した国も少なくない。時効廃止で凶悪犯を徹底追及する姿勢を示すことは意義があると言えよう。
だが課題も残る。日本弁護士連合会は「長期間たつとアリバイ証明などが困難となり、被告が不利益を受ける」などとして見直しに反対している。さらに骨子案は過去の事件にも適用するとしているが、遡及(そきゅう)処罰を禁じる憲法に抵触するとの指摘もある。これらの点は法改正までに一層議論を深めるべきだ。
言うまでもなく最も重要なのは真犯人を捕まえることだ。殺人では年間50~60件もの事件が時効を迎えている。初動捜査の充実など捜査能力の一層の向上を図らねばならない。