異国にいながら瀬戸内海のことばかり考えていた。先日、ベトナム北部にあるハロン湾を訪ねた時のことだ。静かな海に大小約2千の島がある。奇抜な形の島が海から突き出た様子は中国・桂林に似ていて「海の桂林」と呼ばれるが、遊覧船から眺めた多島美は瀬戸内海にも似ていた
1994年に世界遺産に登録され、年間約200万人の観光客が押し寄せる。船着き場では世界各国の言葉が飛び交っていた。瀬戸内でもこんな光景が見られる日が来るだろうかと夢想した
数年前、取材で瀬戸内の島々に通った。夕焼けは日ごとに変わる名画のよう。人々の営みが生んだ棚田や段々畑の美しさにも心を奪われた。世界遺産の冠こそないが、世界に誇れる財産との思いを強くした
近年、美術館が整備されるなどアートの島として知られる直島で観光客に話を聞いたことがある。九州から来た若い女性2人組だった。「アートは素晴らしかった。でも一番心に残ったのは長い年月をかけてできた瀬戸内海の景色です」
7月から島々を舞台に瀬戸内国際芸術祭が始まる。世界の注目度も高いようだ。瀬戸内観光の大きな転機になるかもしれない
近くに住みながらしばらく足が遠のいていた。寒さが和らいだら島々を訪ねてみようか。足元の宝物を確かめるために。